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更新日 : 2021/11/30

肖像権・パブリシティ権について学ぶ

目次
  1. はじめに
  2. 肖像権とは
  3. 肖像権侵害の基準について
  4. 肖像権侵害の例 ①
  5. 肖像権侵害の例 ②
  6. パブリシティ権とは
  7. パブリシティ権侵害の例
  8. まとめ

はじめに

肖像権、パブリシティ権はSNSや動画共有サイトなど、発信する機会の多い現代に欠かせない権利です。今回は事例と共に肖像権、パブリシティ権について見ていきましょう。

肖像権とは

肖像権とは、「自分の肖像を他人にみだりに使われない権利」(文化庁)とされています。 ただし法律で明文化されたものではなく、基本的人権の一つとして解釈上存在すると考えられている権利です。 そのため、「肖像権」の定義やその侵害行為について明確な基準はなく、どういった行為が肖像権侵害とされるか、は一概にはいえません。 一方で「肖像権」の存在自体は実際の裁判でも肯定されており、対象となる画像・映像の内容、使用法、撮影場所・方法等を考慮して都度、肖像権侵害かどうかが判断されています。

肖像権侵害の基準について

肖像権は、明確な基準が示されておらず最高裁の判決でも「いくつかの要素を総合考慮」して判断されています。 以下に示す6項目は、ある事件において、報道記者が事件の被疑者を撮影した写真を許可なく週刊誌に掲載したことが、肖像権を侵害しているかどうか争われた際、最高裁が、その違法性を判断するために用いたとして示された要素です。

  1. (1)被撮影者の社会的地位
  2. (2)被撮影者の活動内容
  3. (3)撮影の場所
  4. (4)撮影の目的
  5. (5)撮影の態様
  6. (6)撮影の必要性

以上6 つの要素等を「総合考慮」することで、「撮影によってその人の人格的利益の侵害が、社会生活上受忍の限度を超える」と判断されました。 身近な例では、撮影者本人がネットやSNSにアップした写真等であったとしても、それを許可なく無断で利用した場合、肖像権侵害となる可能性があります。 ただ、撮影された人物が特定できないよう写真等を加工・編集されていた場合、それは肖像権の問題とはなりませんが、写真にそもそも著作物性がある場合は、著作権の問題となる可能性があります。いずれにせよ、無断で他人の写真等を使用するには十分な確認が必要です。 違反の例としては以下のようなものがあります。

肖像権侵害の例 ①

本人の意に反して画像や動画が掲載されている、つまりみだりに使用されている、と判断された場合は肖像権の侵害にあたります。これは著作権の侵害とも似ています。

肖像権侵害の例 ②

原作のコピペ等、そのキャラクターだと誰しもが見て認知できるようであれば、原則的に著作権の侵害にあたります。 コピペではなく模写であっても、複製権あるいは翻案権を侵害にあたります。 また、不特定多数の人が閲覧できる場への配信やアップロードをした場合、公衆送信権という権利を侵害していることになります。 また、肖像権は人に対して認められるものなので、犬、猫、馬といった動物やペットには認められていません。ペットは法律上「もの」として扱われるためです。ただしそのペットの写真が「著作物」として扱われる場合は無断使用した場合、著作権の侵害にあたる場合があるため、人であっても動物であっても、画像や動画の使用には注意が必要です。

パブリシティ権とは

パブリシティ権とは肖像権のうち、英語の「pablicity」という単語を由来とする「有名人や著名人が、自己の氏名や肖像などについて、対価を得て第三者に専属的に使用させ得る権利」です。 ただし、肖像権同様に法律で明文化されたものではなく、個別の法令で定義や保護はなされていません。 芸能人やスポーツ選手などは、肖像権やプライバシー権を持っていながらも、有名人であるために一般人とくらべるとその保護は緩やかになります。例えば、街頭に有名人がいた場合、数多くの通行人がスマートフォンのカメラで撮影することでしょう。しかし同様の行為が一般人に対して行われれば、重大な権利侵害になり得ます。一方で、有名人はこうした行為をある程度は許容せざるを得ません。判例でも「有名人の人格的利益の保護は大幅に制限される」と示されています。有名人・著名人の氏名や肖像は、一般人のそれと比較すると特別な経済的利益を持っており、当然に保護されるべきだ、という解釈によって誕生したのがパブリシティ権です。 パブリシティ権は定義等が明文化されていませんが、最高裁判所はある判決で下記3類型によって、パブリシティ権の侵害と認めてもよい場合の大部分をカバーできるのではないか。との見解を示しています。

  1. (1)ブロマイドやグラビア写真など、それ自体を独立して鑑賞する商品の場合
  2. (2)キャラクター商品など、商品の差別化を図る目的で写真などを付ける場合
  3. (3)写真等を商品広告に使用する場合

パブリシティ権侵害の例

続いて、実際の裁判においてパブリシティ権の侵害が認められた事例を紹介します。 著名俳優Aが、使用許可や使用料の支払いが無いにもかかわらず自身の写真を多数掲載し、雑誌Xを出版・販売していたとして、出版社Y社等に対し、A氏のパブリシティ権侵害にあたると主張して、損害賠償を求めた。判決では以下のような事実を認定し、A氏の損害賠償請求を認めた。

  1. (1)雑誌Xの全体構成は、A氏が来日した際の様子を紹介することを中心としており、多くのページにA氏の氏名、写真、関連記事、関連広告が掲載されている。
  2. (2)雑誌Xには、70枚を超えるA氏の写真が掲載されている。
  3. (3)表表紙と裏表紙どちらにも、A氏の写真が全面に使用され、表表紙にはA氏の氏名が大きく記載されている。
  4. (4)多くのページの全面にA氏の写真が使用され、記事部分があるページもごくわずかか、数分の1である。

以上4点から、「A氏の氏名・肖像は強い顧客吸引力を有すること、雑誌Xが上質な光沢紙を使用したカラーグラビア印刷の雑誌であることなどを併せ考えると、雑誌Xのように表紙及び本文の大部分でA氏の顔や上半身等の写真をページの全面又はほぼ全面にわたって掲載するような態様でのA氏の写真の使用は、A氏の顧客吸引力に着目し、専らその利用を目的とするものと認められ、A氏のパブリシティ権を侵害する」と判断されました。 A氏に対して一切の許諾なしに、多数の写真を雑誌に掲載したのは明らかにA氏の顧客吸引力を利用した、としてA氏のパブリシティ権侵害を認めるとともに雑誌Xを出版した出版社Y社に対し損害賠償命令が命じられました。 上記で紹介した以外にもこれまでにパブリシティ権が論点となった判例はありますが、その侵害が認められた事例、認められなかった事例、どちらもあります。 アフィリエイト広告において有名人・著名人の肖像を使用する場合、許諾の元使用するのが原則ですが、今回紹介した肖像権やパブリシティ権の概念も知った上で広告業に関わっていけるとよいでしょう。

まとめ

人物の画像や動画を使用することの多いアフィリエイターにとって肖像権・パブリシティ権は重要な権利になります。正しい知識を使ってより良い広告を作成することが重要です。

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